建設業に限らずですが、金融機関からの融資を得るために粉飾決算を行っている会社というのは少なからずあるようです。建設業の場合には、公共工事の入札があって、経営事項審査の成績が問題視されますから、財務体質を良くしたいというインセンティブが働きやすい業界といえそうです。そこで本当は赤字なのに、粉飾決算で黒字になっている会社に税務調査が入ってしまったら、どうなってしまうのでしょうか。
1.税務調査官の対応
結論から申しますと、過大申告額については、会社側でそれを是正しない限り、減額更正の対象とはしないということになります。税務調査官としては、調査に入ったことによってどれだけ課税したかが成績になりますから、仮に過大申告の分を是正してしまったら、それだけ自分の成績が上がらなくなってしまいます。法令上は、税務調査を行ったときは、本来あるべき所得と異なる額の申告がされていることが分かった場合には、適正額に構成しなければならないことになっています(通則法24)。つまり過少申告であれば増額更正、過大申告であれば減額更正ですね。
過大申告がなされている場合、その過大申告部分に事実を仮装して経理している場合、税務署長はその会社がその後の事業年度の確定した決算において、当該仮装した事実について修正(過年度損益修正損の計上)をして、その決算に基づく確定申告書(過年度損益修正損の計上)を提出するまでの間は仮装経理による過大申告額については減額更正しないことができるとされています(法人税法129①)。
加えて、減額更正が行われた場合でも、過大に納付した法人税が即座に全額還付されるわけではなく、減額更正の日の属する事業年度の一つ前の事業年度の所得に対する法人税の額に達するまでの金額に限定されています(法法135①②)。還付しきれなかった金額は、その減額更正の日の属する事業年度開始の日以後5年以内に開始する各事業年度の所得に対する法人税の額から順次控除(税額控除)し、それでもなお還付しきれない金額があるときは、その全額が還付されます(法法70、135③)。
2.税務上のペナルティ
仮に税務調査の時に、粉飾決算による過大申告分は横に置き、過少申告分があれば、その分について、是正するということになります。