確定処分の違法と国家賠償

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最高裁平成22年6月3日第一小法廷判決

(事件概要)
X:(原告・控訴人・上告人)倉庫業を営む法人
Y:(被告・被控訴人・被上告人) 名古屋市長

本件倉庫の価格が長年誤って価格評価されていたため、名古屋市長が価格を修正して固定資産課税台帳に登録しなおして、減額更正処分。Xはその対象期間以前にも評価の誤りがあり、過失があったとして、国家賠償法1条1項に基づき、固定資産税などの過納金相当額等を求めて提訴。

1.論点
行政事件訴訟法3条3項の処分性が認められる行為を不法行為とする国賠請求を認容するに当たり、これを金銭に関わる行政処分に及ぼしてよいか。

2.判旨 原審差戻
固定資産の価格の決定及びこれに基づく固定資産税等の賦課決定に無効事由が認められない場合であっても、公務員が納税者に対する職務上の法的義務に違背して固定資産の価格や税額を過大に決定したときは、納税者は地方税法432条1項本文に基づく審査の申し出及び同法434条1項に基づく取消訴訟等の手続きを得るまでもなく、国家賠償請求を行い得る。

3.解説
本件では登録価格についての審査申し出や取消訴訟を行っていない。それは審査申し出期間が徒過していたため、消滅時効のハードルがあった。ここで過納金相当額等の損害賠償を求める訴訟を提起。こちらは20年の消滅時効である。

(a) 取消訴訟の排他性に反しないか
行政事件訴訟法第3条2項等の規定の解釈として行政処分の法効果を否定できるのは、当該処分の取消判決に限定するのが合理的。当該処分の取り消し訴訟以外の訴訟では、当該処分の法効果を否定するべく、その違法を主張しても審理されない。
過納金還付請求訴訟において、還付請求権が存在する根拠として、課税処分の違法を主張しその効力を否定することは許されない。

(b) 地方税法が定める争訟手続きの潜脱にならないか
審査申し出や取消訴訟が行政法規に違反する行政庁の行為は是正されなければならないという法理に基づく紛争解決を目指す手続きであるのに対し、国賠訴訟は不法行為法理に基づき損害の金銭的補填を求める紛争解決手続きであるから、取り上げる紛争や法理が異なる。このように考えると地方税法の規定をもって国賠訴訟の請求を排除する趣旨というのは根拠不足。

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