詐害行為取消権と納税義務成立の要否

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横浜地裁小田原支部平成7年9月26日判決

(事件概要)

X;(原告)国

Y:(被告)金属の生成・加工、薬品の製造・輸出入・販売等を業とする株式会社

訴外AはYの塗装部門を担当するためにYの全額出資で設立。Bは大手鉄鋼メーカーからの受注を担当する会社として、YとYの当時の代表取締役Cとの全額出資で設立。Y、A、Bは役員がほぼ重なり、同一の経理担当者で経理がなされていた。

Aは欠損が4億円に達し、経営の維持が困難となり、Aは訴外Dに対して不動産を約10億で譲渡。さらに事業用資産取得の予定があるとして、租税特別措置法65条の8に定める特定の資産の譲渡に伴い、特別勘定を設けた場合の課税の特例に基づいて、上記売却益のうち約3.5億円を損金として特別勘定に繰り入れて課税の繰延を行い、その後、昭和63年度において上記特別勘定を取り崩して、確定法人税額約8,000万円の申告を行うものの、滞納。

国は、詐害行為取消権に基づき、訴訟提起、AのYに対する弁済を取消、遅延存在金を支払うことを求めた。

1.論点

国税通則法42条が租税の徴収に関して準用する民法424条の要件につき、租税債権が成立する以前に行われた納税者の行為を詐害行為として取り消すことができるか。

2.判旨 請求認容。遅延損害金の起算日を本決確定の日の翌日とした。

詐害行為取消権の被保全債権は、詐害行為以前に発生したものであることを要するが、詐害行為当時未だ発生していない債権であっても、発生の基礎となる法律関係や事実が発生し、債権の発生が高度の蓋然性をもって見込まれる場合には、右債権も被保全債権になりうる。

Aが財力の点で、買換資産を取得する見込みはなかったといわざるを負えないから、本件租税債権は、発生が高度の蓋然性をもって見込まれていたというべき。

債務者が債務の本旨に従った弁済をしたときであっても、特定の債権者と通謀し、他の債権者を害する意思をもって弁済したような場合には詐害行為となるもの。

詐害行為取消に伴う債権者の受益者に対する返還請求権は、判決の確定によって発生するものであって、右確定前に右債権が遅滞に陥ることはないから、返済義務の不履行に基づく遅延損害金の起算日は、本判決確定の日の翌日というべき。

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