通常の取引では、取引当事者が取引価格に合意し、その取引価格で取引の対象物を引き渡して完結するため、当初の合意した取引価格を事後に変更する価格の調整は起こりませんが、海外との取引の場合は、急激な為替変動や原材料費の高騰などで、当初合意していた価格で決済をした場合、当事者の一方が多額の損失を被ることも少なくありません。このような状況下で、海外子会社に対して事後の価格変動を織り込んだ価格調整金を支払った場合、どのような税務上の問題が生じるでしょうか。
1.価格調整金
価格調整金については、調査官はその支出の合理性がなければ海外子会社に対する経済的な利益の供与、つまり寄付金として損金算入を否認することになります(措法66の4③)。合理性とは、移転価格事務運営要領によると、価格調整金の支払い等に係る理由、事前の取り決めの内容、算定の方法及び計算根拠、当該支払等を決定した日、当該支払等をした日といった事項を総合的に勘案して検討します(事務運営指針2-20)。
重要なことは契約書や覚書等の文書で事前に取り決めること、その取り決め内容の合理性、つまり算定根拠が明快で理にかなっていることにあります。また、海外の国外関連者に該当しないその他の取引先とも同様の取り決めにより価格調整が行われている場合には合理的とみなされる可能性があります、
2.事前確認制度
移転価格税制は、これによって課税された場合、課税金額が大きくなる可能性が高く、相互協議で二重課税の回避を求める場合であっても時間がかかり、二重課税が解消されないこともあります。そのため、納税者が申し出ることで、独立企業間価格の算定方法を課税庁が事前に確認する手続きが取られます。これを事前確認制度(Advance Pricing Agreement)と言います
事前確認が取れれば、そのような価格調整金の支払は税法上適正な取引とされますので、寄付金として認定されることはありません。