不動産の仲介業を営んでおりますが、お客様が二つの物件を売却したいとお考えのようでした。両物件を売却し、片方が賃貸アパート3,000万円の売却益、もう一つが別荘4,000万円の売却損を出しましたが、別の期に取引をしたため、損益通算ができなかったとクレームを言ってきました。
1.ポイント
お客様は、損益通算と内部通算の取扱いを取り違えていたようです。業者は税務対応についての専門家等へのご相談を促すべきでした。両物件の売却を当年中にすれば、売却損と売却益と通算して譲渡所得(分離課税)を算定することができました。当年中の譲渡所得は生じなかったことになります。
2.解説
別荘のように「生活に通常必要でない資産」の譲渡損失は、他の各種所得との「損益通算」ができません。「損益通算」とは、不動産所得、事業所得、山林所得または譲渡所得の金額の計算上生じた損失を他の各種所得の金額から控除して通算することを言います。同じ種類の所得の内に、損失と利益があり、これを差引計算する「内部通算」は「損益通算」ではありません。すなわち、別荘の譲渡損4,000万円は、他の所得である給与所得や不動産所得とは通算することはできませんが、賃貸アパートの譲渡益3,000万円が同一年に生じていれば、同じ譲渡所得の中で通算することが可能でした。