請負工事の収益計上基準はどのようなものがあるのでしょうか。
1.ポイント
請負工事の収益計上基準は法人税基本通達2 – 1 – 5に、完成時に収益を計上することが原則になっていますが、部分完成基準、延払基準、工事進行基準も可能な場合があります。
2.解説
(1) 部分完成基準
1つの契約により同種の建設工事等を多量に請け負い、その引渡量に従って工事代金を収受する旨の特約又は習慣がある場合、例を上げると、建売住宅の建築を請け負い、全戸が完成しなくても完成した戸数のみを引き渡し、その部分の請負金額に相当する代金の支払いが行われるようなとき、つまり、部分完成基準の要件は目的物の引き渡しと工事代金の請求とが同時に行われることです。但し、工事進行基準を適用する長期大規模工事に該当する場合は、強制適用となるため、部分完成基準での適用はできません。
(2) 延払基準
長期割賦販売等に該当する工事の請け負いをした場合に、その収益額および費用の額につき、工事の引き渡しの日の属する事業年度以後の各事業年度の確定した決算において政令で定める延払基準で経理したときは、そ の経理した収益及び費用の額はその事業年度の益金の額及び損金の額に算入する、と規定しています。
(a) 3回以上に分割した賦払い(月賦、年賦)を受けること
(b) 請け負いの目的物の引渡期日の翌日から最後の賦払金の支払期日までの期間が2年以上あること
(c) その契約に定められている請け負いの目的物の引渡しの期日までに支払期日の到来する賦払金の合計額が請負金額の3分の2以下となっていること
また、政令で定める延払基準による収益及び原価の計上方法は、次のようになります。
当期に計上すべき収益=請負工事の対価の額×賦払金割合
当期に計上すべき原価=請負工事の原価の額×賦払金割合
賦払金割合=対価の額の賦払金のうち当期に支払い期日の到来した合計額/請負工事の対価の額
(3) 工事進行基準
工事進行基準については、3要件を備えていることで強制適用となりますが、継続適用を要件とし、長期(1年以上)請負工事に関しても選択適用が可能となります。工事進行基準での収益及び原価の計上方法は次の通りとなります。
(a) 当期工事収益=予想工事請負金額×工事進行割合−前事業年度までに計上した収益
(b) 当期工事原価=予想工事原価×工事進行割合−前事業年度までに支出した原価
(c) 工事進行割合=当期までに発生した原価÷予想工事原価
また、工事進行基準については損失が見込まれる工事も含まれますが、翌年以降に見込まれる分の損失を工事損失引当金として会計上計上したとしても、確定債務ではありませんので、法人税法上の経費としては認められないことに注意が必要です。