父は運送業を営んでおり、会社以外の金銭債権をほとんど持っていませんでした。そのため、兄弟二人に、会社を分割して、それぞれの株式で相続することを計画していました。そして父が亡くなり、相続を開始しましたところ、開業三年未満の会社は相続税評価額が高くなるという事で愕然としました。
1.ポイント
開業3年未満の会社や、主たる業種が変わってから間もない会社の株式については、相続税の計算上「類似業種比準価額」の使用ができず、「純資産価額」により評価されるため、一般的に相続税評価額が高くなる可能性があります。
2.解説
非上場株式の評価は、上場企業と異なり、実務上「財産評価基本通達」にしたがって行われており、年間配当額、年間利益金額及び税務上の純資産価額を上場企業のそれと比較して計算する「類似業種比準価額」と法人の貸借対照表を時価換算して計算する「純資産価額」の2つを、会社規模に応じて併用して計算します。
<非上場株式の評価方法(概要)>
会社規模 |
類似業種比準価額 |
純資産価額 |
いずれか低い価額を選択 |
純資産価額 |
従業員数 売上金額 総資産額 の大小により決定 |
年間配当金額 年間利益金額 税務上の純資産 を考慮して決定 |
時価純資産額 により決定 |
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大会社 |
類似業種比準価額×100% |
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中会社の大 |
類似業種比準価額×90% |
純資産価額×10% |
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中会社の中 |
類似業種比準価額×75% |
純資産価額×25% |
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中会社の小 |
類似業種比準価額×60% |
純資産価額×40% |
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小会社 |
類似業種比準価額×50% |
純資産価額×50% |
特定のケース、例えば、開業後3年未満の会社や主たる業種が変わってから間もない会社に該当する場合、類似業種比準価額の測定が難しいため、通常は純資産価額により評価します。
一般的に純資産価額は類似業種比準価額よりも評価額が高くなるため、相続税を押し上げる効果がありますので注意が必要です。