法人税法68条と更正の請求

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最高裁平成21年7月10日第二小法廷判決

(事件概要)
X:(原告・被控訴人・上告人)南九州コカ・コーラ・ボトリング
Y:(被告・控訴人・被上告人) 税務署長

Xは法人税法68条1項の規定を適用し、配当等に対して課された所得税額を控除するにあたり、控除を受ける所得税額を銘柄別簡便法により計算して確定申告をした。28銘柄のうち8銘柄につき計算を誤り、所得税額を過少に記載。その更正の請求をしたところ、Yは本件更正請求につき更正すべき理由がないとした。Xは取り消しを求めて訴訟提起。

1.論点
納税者が確定申告書に記載して、そこに法令解釈の誤りや計算の誤りがあった場合に、国税通則法23条1項1号の要件に該当して、更正の請求が認められるかどうか

2.判旨 破棄自判
法人税法68条の3項は納税者である法人が確定申告において、当該事業年度中に支払いを受けた配当に係る所得税額の全部又は一部につき、所得税額控除制度の適用を受けることを選択しなかった以上、後になってこれを覆し、同制度の適用を受ける範囲を追加的に拡張する趣旨で更正の請求をすることは許されないこととしたものと解される。
Xの誤りは単純な誤りであり、別の理由で選択した結果でもない。法令に基づき正当に計算される金額について、所得税額控除制度の適用を受けることを選択する意思であった。誤って過少に記載した金額に限り同制度の適用を受ける意思であったとは思われない。
本件更正請求は所得税額控除制度の適用を受ける範囲を追加的に拡張する趣旨ではないため、法人税法68条3項の趣旨に反せず、国税通則法23条1項1号所定の要件に該当する。

3.解説
法人税法68条は二重課税を排除する手段として、内国法人が利子・配当等に欠かす所得税額相当額を法人税の額から控除することを認めている。
更正の請求には、申告書に記載した課税標準等又は税額に誤りがあることを理由とする更正の請求と、後発的理由によって課税標準等又は税額の計算の基礎に変動が生じたことを理由とする更正の請求がある。
事後的に変更することが認められれば、実質的に申告期限を延長したのと同様の結果を生じさせるため、一定の事由がなければ認められない。
なお、平成23年12月法改正によって、①インセンティブ措置又は②各種引当金等の利用の有無により有利にも不利にもなる措置に該当するものを除き、当初申告要件を廃止、現行では、確定申告書、修正申告書又は更正申告書に控除を受けるべき金額等がある場合に適用することとされており、更正請求によって所得税額控除及びその金額の修正額が認められることが明確になっている。

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