最高裁平成15年4月25日第二小法廷判決
(事件概要)
X:(原告・被控訴人・上告人)Aの相続人
Y:(被告・控訴人・被上告人)税務署長
Xは遺産分割協議を行って一度相続税申告を行い、再度修正申告をした。X以外の他の相続人は遺産分割協議が通謀虚偽表示による無効なものとして、別件で無効確認訴訟を提起。その後他の相続人らの請求を認容する判決が確定。
そこでXは更正の請求。Yは更正すべき理由がないとした。Xは異議申し立て。
1.論点
更正の請求を認めるやむを得ない事情とは何か。
2.判旨 上告棄却
Xは通謀虚偽表示により本件遺産分割協議が成立して本件申告を行った後で、遺産分割協議の無効を確認する判決が確定し更正の請求をした。Xは国税通則法23条1項の所定の期間内に更正の請求をしなかったことにつきやむを得ない理由があるとは言えないため、更正の請求をすることは許されないと解するのが相当。
3.解説
国税通則法23条1項は更正の請求について法定期間内にされるべきものとしている。改正後は原則5年に延長された。また同上2項では、期間経過後も2号所定の事由があるときには、更正の請求を例外的に認める。その事由とは
(a) 申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えについての判決により、その事実が当該計算の基礎と異なることが確定したとき
(b) その申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算に当たって申告をし、また経決定を受けた者に帰属するものとされていた所得その他課税物件が他の者に帰属するものとする当該他の者に係る国税の更正又は決定があったとき
(c) その他当該国税の法定申告期限後に生じた前2号に類する政令でやむを得ない理由があるとき
さらに「政令で定めるやむを得ない理由」とは国税通則法施行令6条1項に定める。
(1) 計算の基礎となった事実のうちに含まれていた行為の効力に係る官公庁の許可等が取り消されたこと
(2) 計算の基礎となった事実に係る契約が解除権の行使や当該契約の成立後生じたやむを得ない事情によって解除される等したこと等