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日本の国税庁も、数多くのタックスヘイブン対策として次第にその成果を上げています。いくつかその戦略を見ていきましょう。
(1) 調書の提出義務
これには以下の3つがあります。
(a) 国外送金等調書の活用
国外送金や国外からの受金した金額が100万円超の場合、金融機関は税務署に調書を提出しなければなりません。氏名、取引金額、取引年月日を知らせています。
(b) 国外財産調書の活用
対象は個人ですが、預金や有価証券、不動産の国外財産が5,000万円超のものは、財産の種類や価額等を記載して調書を提出する必要があります。正当な理由がない不提出には罰則規定があります。
(c) 財産債務調書の活用
対象は個人ですが、所得金額2,000万円超かつ3億円以上の財産または1億円以上の有価証券を有する者が提出しなければなりません。ここでは財産の種類及び価額を記載することになっています。
(2) 租税条約に基づく情報交換
租税条約には次の3つの情報交換があります。
(a) 要請に基づく情報交換
調査事案において、調査対象者の銀行口座について情報提供を受けることで更正処分の裏助を取りたい場合に行われます。
(b) 自発的情報交換
互いの国が要請なくとも、他国に有効な情報を自発的に提供します。
(c) 自動的情報提供
相手国の個別的な要請を待たずに自動的に情報を提供します。
実際には、相手国の協力度合いも問題になります。例えば、対象者への調査を厳密に行ったら、投資家が逃げてしまうこともあります。そのため、積極的に情報を提供する確実性はありません。また、相手国の調査能力が乏しければ、お願いしても思ったような情報が提供されない場合もあります。先進国であればこのような問題も起こり得ないかもしれませんが、開発途上国では税務調査の能力が高くないこともあります。また、公務員が賄賂を渡されてしまえば、情報を提供しないということもあるかもしれません。また、租税条約が締結されていなければ、情報交換制度はありません。
(3) CRSによる緊急口座情報
CRS(Common Reporting Standard)は非居住者の金融口座情報を自動的に交換する制度です。オフショア金融センターを含む、110か国や地域で年1回情報交換を行います。この情報を共通化して、金融機関の事務負担を軽減し、国際的な課税逃れを防止することが期待されています。
(4) 多国籍企業情報の報告制度の創設
総収入金額1,000億円以上の多国籍企業グループが個別報告事項等を提供します。こちらも年1回の情報交換です。これによって国際的な租税回避の防止が期待されています。