最高裁平成16年10月29日第二小法廷判決
(事件概要)
X:(原告・控訴人・上告人)宅地開発業
Y:(被告・被控訴人・被上告人)税務署長
Xは法人税について虚偽過少申告をして法人税を免れたとして起訴。XはA市の土地を購入し、宅地造成販売。宅地開発は知事の許可とA市の合意が必要。A市の合意を受けて、Xは本件宅地を造成して販売、その収益を益金算入。
A市の指導が二転算定し、Xが工事の見積もりをしてそれを売上原価に算入。
1.論点
債務の確定しない支出の見込みであっても、売上原価として損金に算入することができるか。
2.判旨 破棄差戻
A市は都市計画法上の同意権を背景としてXに改修工事を求め、Xはその費用を支出せざるを得ない立場に置かれていた。Xは建設会社に見積もらせる等、支出を見込んでいた。Xが近い将来にこれら費用を支出することが相当確実性をもって見込まれていた。金額を適正に見積もることが可能であった。
このような場合、当該事業年度終了までに当該費用に掛かる債務が確定していないときでも、法人税法22条3項1号の「当該事業年度の収益に係る売上原価」の額として損金に算入できる。
3.解説
租税法が債務の確定を求めるのは、緩やかな費用認識を制限するため。例えば災害による資産の損壊を考えればわかるように損失には債務を観念できない資産価値の劣化が含まれる。そのため、法人税法22条3項3号に債務確定の要件はない。