タックスヘイブン対策税制の適用除外要件~来料加工~

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東京地裁平成24年7月20日判決

(事件概要)

X:(原告・控訴人・上告人)カメラ用フラッシュユニットのメーカー

Y:(被告・被控訴人・被上告人) 税務署長

A:香港を本店所在地とする会社(原告の役員が設立)

B:中国広東省を所在地とし、カメラ用フラッシュユニットの組み立てを行う会社

AはBとの間で、Aが設備、原材料を無償提供し、完成した製品を全量無償で引き取り、AからBに対して加工賃を支払う委託契約、来料加工を締結。

YはAが租税特別措置法66条の6第1項及び同40条4第1項に特定外国子会社に該当するとして、Aの課税対象留保金額はXの益金に算入されるとして、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分。

1.論点

主たる事業とは何か、Aの主たる事業が卸売業以外の事業である場合、所在地国基準を満たしているか、子会社の設立や事業遂行等に経済合理性が認められる場合にはタックスヘイブン対策税制は適用されないと解すべきか。

2.判旨 請求棄却

主たる事業は製造業。特定外国子会社等が製造業を主として本店所在地国で行っているかを判断するにあたっては、当該会社の工場建物、機械設備の確保、管理、原材料や労働力の確保、人事・労務管理、品質管理、財務管理等の状況を総合的に勘案して社会通念に照らし実質的に判断するのが相当。

Aは自社工場の役割を果たしているBが所在する中国で製造行為を行い、Aの資本の多くを同地に投下し、中国の経済と密接に関連して事業活動を行っていたと認められ、主たる事業は本店所在地国である香港ではなく、Bが所在する中国と言える。

タックスヘイブン対策税制の適用除外規定は、特定外国子会社等の主たる事業を主として本店所在地国で行っている場合に、所在地国での事業活動が正常なものとして経済的合理性を有すると判断する手法を採用しているから、タックスヘイブン対策税制の適用除外要件を充足していないにもかかわらず適用除外を認めることは法的安定性や課税の公平性に反する。

3.解説

タックスヘイブン対策税制の適用除外は次の通り。

  • 事業基準:外国子会社の主たる事業が株式もしくは債券の保有、工業所有権等の提供、又は船舶もしくは航空機の貸付以外のものであること。
  • 実体基準:その本店又は主たる事務所の所在する国または地域においてその主たる事業を行うに必要と認められる事務所、店舗、工場その他の固定施設を有していること。
  • 管理支配基準:本店又は主たる事務所の所在する国または地域において、その事業の管理及び運営を自ら行っていること。
  • 非関連者基準→主たる事業が卸売業等である場合、その事業を主として非関連者との間で行っていること、所在地国基準→主たる事業がそれ以外の事業について、その事業を主として本店又は主たる事務所の所在する国または地域において行っている。

本判決では、中国において製造行為を行っていることから所在地国基準を満たさないと判断。また、適用除外要件を充足していないにもかかわらず、経済合理性を有することで適用除外を認めることは租税法律主義に反すると判断。

なお、中国政府は外国企業から施設を輸入する際に課税することとしたため、来料加工による税メリットは失われた。

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