相続税と同族会社の行為計算の否認

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大阪地裁平成12年5月12日判決

(事件概要)
X:(原告・控訴人・上告人)広大な農地を所有していた人の相続人
Y:(被告・被控訴人・被上告人) 税務署長
Z:Xの親

農地を駐車場に転用するため、農業委員会に転用の届を行ったが、Zが死亡したためXはこれを取り下げ。相続税申告の際に2割減額で算定。しかしYは市街地農地にあたるとして時価を算定しなおし増額更正処分。
もう一つ、ZとXは有限会社を設立、駐車場事業を運営。A社から著しく低い価格で全額現物出資をする形でB社を設立。Zは地上権に伴うに地代をB社から得る。B社自体は赤字。二つの同族会社はZの死後、Aに吸収合併。B社の保有していたA社の出資を償却、減資。評価差額に対する法人税額相当額を控除。いわゆるA社、B社方式による租税回避。
相続税申告の際に、本件宅地等の更地価額から地上権割合90%を控除し時価を算定。Yは本件地上権設定契約は同族会社の行為計算に当たるとして、課税計算。

1.論点
本件宅地に設定された地上権設定行為を相続税法64条1項の適用により否認したことの可否。及び本件出資価額の評価に関する評価通達6項の適用可否。


2.判旨 請求棄却
相続税法64条1項は、同族会社を一方当事者とする取引が、通常の経済人であれば採用しない不自然、不合理な取引を行い、税額の負担を不当に減少させる場合には、これら行為を否認し、通常の経済人の採用した計算で税金を課する制度である。
本件は、駐車場経営という利用目的に照らし、通常の賃借権ではなく、地上権を設定したことは不自然であり、営業収益と比較してあまりにも高額に設定されB社が大幅な営業損失を生じている点を見ると、経済合理性を無視したものといえる。
地上権を控除した場合、Xら相続税の負担を大幅に不自然に減少させる結果となる。その結果、本件地上権設定行為を否認できる。

3.解説
相続税法23条によれば、本件宅地等は地上権が設定されると地上権の評価額が更地の90%相当額となり、底地は10%相当額と評価される。賃借権の設定では、借地権の評価額はゼロ、底地の評価額は更地の80%相当額と評価。

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