親会社から子会社に対して出向するのはよくある話ですが、そのときに出向元の親会社では従業員であっても、出向先の子会社では役員として派遣されていれば、厄介な事情が生じます。
原則、役員報酬は、損金(税務上の費用)としては認められていません。それが損金に認められるためには、①定期同額給与、②事前確定届出給与、③利益連動給与のいずれかに該当しなければならないという建前になっています。
定期同額給与とは、株主総会で決めた金額が原則1年間同じだけ支払われているものです。株主総会で月額50万円と決めたら、その金額が変わらず支払われていることなのです。例外はありますが、それはまた別稿にて。
次に事前確定届出給与とは、いつ、いくら支給すると予め税務署に届出を出すものです。そして、利益連動給与とは、同族会社では使えませんから、中小企業では使えないと言ってもよいでしょう。
さて、本稿の論点は役員報酬の損金性ではなくて、子会社で役員となっていた場合、子会社では出稿負担金として親会社へ支払うわけですが、その時の経理処理はあくまでも役員報酬として支払います。これが株主総会で決められた金額を毎月同額支払うのであれば問題はないのですが、子会社で役員としてとなると、「事前確定届出給与に関する届出書」の提出を忘れてしまうことが多いのです。
この届出を提出しなければ、その分のいわゆる役員賞与と支払われた金額については損金と認められません。事前確定届出給与に関する届出書は、以下の期日までに提出する必要があります(法令69③)。
- 原則:事前確定届出給与に関する株主総会等の決議を行った日から1か月を経過する日まで。但し遅くとも事業年度開始の日から4か月を経過する日まで。
- 新設法人の場合:設立の日以後、2か月を経過する日まで。
- 臨時改定事由があった場合(役員の職制上の地位の変更や職務の内容の重大な変更等)があった場合。次のいずれか遅い日まで。
・(a)の期日((b)に該当する場合は(b)の期日)
・臨時改定事由が生じた日から1か月を経過する日