最高裁平成21年10月29日第一小法廷判決
(事件概要)
X:(原告・控訴人・上告人)Aの株式9割を保有する内国法人
Y:(被告・被控訴人・被上告人) 税務署長
A:シンガポールで設立された外国法人、胃潰瘍薬の製造販売事業
Aは上記事業を関連会社に譲渡。シンガポールの株式譲渡益は非課税であるため、租税の額はAの課税所得の4%程度にとどまった。YはAがいわゆるタックスヘイブン対策税制の特定外国子会社等に当たるとして、更正及び過少申告加算税賦課決定。Xは日星租税条約7条1項に反するとして争う。
1.論点
タックスヘイブン対策税制が条約と適合しているか否か。
2.判旨 上告棄却
日星租税条約7条1項は、恒久的施設なくして課税なしを確認する趣旨の規定。同行は法的二重課税を禁止するにとどまる。措置法66条の6第1項があくまで我が国の内国法人に対する課税権の行使押して行われるものである以上、日星租税条約7条1項による禁止または制限の対象に含まれない。
我が国のタックスヘイブン対策税制は、特定外国子会社等に所得を留保してわが国の税負担を免れることとなる内国法人に対しては当該所得を当該内国法人の所得に合算して課税することで税負担を公平性を追求し、特定外国子会社等の事業活動に経済合理性が認められる場合を適用除外とし、所定の方法による外国法人税額の控除を認める等、全体として合理性のある制度と言える。