不動産の賃貸業を経営していますが、不動産の取得の際に売り主に支払った固定資産税の精算金を損金の額に算入した場合、どのような問題が発生するでしょうか。
1.未経過分の固定資産税を生産する商慣行
土地や建物の売買取引において、対象となる土地と建物の所有権移転後の期間に対応する固定資産税の額を売買代金に上乗せして支払うことは商習慣としてよくあり得ます。
固定資産税が資産の所有に対して課される税であり、1年間の所有に対する税金が1月1日現在の所有者に対して全額賦課されることとなるため、売り主が負担する当該1年間の固定資産税のうち所有権移転後の部分に相当する額を買い主が負担するという両者の合意により受払が行われるものです。
毎年1月1日現在の所有者が同年の4月、7月、12月及び翌年2月の4回にわたり固定資産罪の納税義務を負います。これは途中で固定資産を売却しても免除されません。そのため対課税当局との関係で免除されず継続するものについて、対買主との間における交渉で、未経過分固定資産相当額の負担を求めることは、合理的ともいえます。
2.税務上の対応
買主が土地や建物の取得の際に負担する「未経過分固定資産税相当額」につき、租税公課等として損金処理するか、当該土地や建物の取得価額の一部として認識するかについては、未経過分固定資産税相当額は売り主と買主の売買条件の交渉の中で決した売買対価の一部を構成するに過ぎないことから、売買対象となる土地や建物の取得価額として扱われます。
- 1月1日現在の所有者である売り主が納付する固定資産税が純粋な租税です。未経過分固定資産税相当額は当事者間の金員の受払であり、租税には該当しません。
- 上記の通り暦年ベースにより算定する地域もあれば、会計年度ベースにより算定する地域もあるなど、その算定方法の決定等はその金員の収受を行うか否かを含めて売買当事者の任意の意思にゆだねられている。
原則未経過分固定資産税相当額については固定資産の取得価額として扱われます。なお、減価償却資産の取得価額に含めるべき付随費用を取得価額に含めずに損金経理をした場合、当該金額は償却費として損金経理をした金額として扱われるところ、未経過分固定資産相当を租税公課として損金経理していれば、建物の取得金額に含めるべき金額については相応の減価償却費の減額が認められることとなります。