海外に住む父の現金が、海外にある子の口座に入金されていました。父としては贈与者が海外にいれば、日本の贈与税がかからないと勘違いしていたようでした。
1.ポイント
贈与税は、贈与者(あげる人)と受贈者(もらう人)がどこに住所があるか、また、贈与される財産がどこにあるかによって取り扱いが異なります。
贈与者である父は「国内に住所なし」ですが、娘は「国内に住所あり」のため、「国内・国外財産ともに課税」されます。よって、父から娘がもらった現金は日本の贈与税の対象となります。
2.解説
贈与税は年間110万円を超える財産をもらった人に対して課税されます。贈与税の納税義務がある人は下記の表のとおりです。
受贈者
贈与者 |
国内に居住 |
国外に居住 |
|||
日本国籍あり |
日本国籍なし |
||||
5年以内に国内に住所あり |
左記以外 |
||||
国内に居住 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
|
国外に居住 |
5年以内に国内に住所あり |
〇 |
〇 |
〇 |
□ |
上記以外 |
〇 |
〇 |
□ |
□ |
国内・国外財産共に課税:〇
国内財産のみ課税:□
なお、国内に住所があるかどうかの判定は、住居・職業・資産の所在・親族の居住状況・国籍等の客観的事実によって判断されることになるため、単純に年間の滞在日数のみで判断されるものではありません。
なお、財産の所在については、資産ごとに以下のように定められております。
財産の種類 | 所在地 |
不動産 預貯金 生命保険契約 貸付金 社債・株式 国債・地方債 その他定めのない財産 | その不動産の所在地 預入をした支店、営業所の所在地 その契約に係る保険会社の本店等所在地 債務者の住所又は本店等の所在地 発行法人の本店の所在地 発行した国・地方公共団体の所在地 贈与者の住所地 |
今回は預貯金を贈与しておりますが、贈与した預貯金はアメリカの口座であるため、「預入をした支店・営業所の所在地」が国外となります。よって、国外財産の贈与ということになりますが、納税義務者の判定により、国外財産であっても日本の贈与税の対象となります。
国外財産を贈与した場合に日本の贈与税がかからないケースは、①贈与者が国外に居住しており、受贈者が国外に居住し、かつ、日本国籍がない場合と②贈与者も受贈者も5年を超えて国内に住所がない場合ということになります。
上記のとおり、国外にある財産であっても、あげる人ともらう人の住所等により日本の贈与税の対象となります。また、平成26年以降は、「国外財産調書」の提出が義務付けられておりますので、国外にある財産について、贈与をしたり、名義を書き換えたりする場合には注意が必要です。