最高裁平成17年2月1日第三小法廷判決
(事件概要)
X:(原告・控訴人・上告人)ゴルフクラブ会員権の贈与を受けた者
Y:(被告・被控訴人・被上告人) 税務署長
Xは確定申告時に本件代金と手数料の合計額を取得費として、長期譲渡所得の金額を算定。Yは本件手数料の取得費算入を認めず、増額更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分。Xは異議申し立て。
1.論点
ゴルフ会員権の手数料が取得費に該当するか。
2.判旨 破棄自判
所得税法60条1項の規定は、増加益に対する課税の繰延にある。受贈者の譲渡所得の金額の計算において、受贈者の資産の保有期間に係る増加益に贈与者の資産の保有期間に係る増加益を合わせたものを超えて所得として把握することを予定していない。
付随費用の額は、受贈者の資産の保有期間に係る増加益の計算において資産の取得に要した金額として収入金額から控除されるべき性質のもの。上記付随費用の額は資産の取得に要した金額に当たる。
3.解説
法60条1項のみを理由に付随費用の取得費算入を否定することは、同行各号の事由が生じる場合に限り受贈者などの増加益を過大に把握しようとする点で公平を損なう。
法60条1項1号所定の贈与は、その時点では資産の増加益が具体的に顕在化しないので、これを留保し、その後受贈者が資産を譲渡することでその増加益が顕在化した後で課税することとした。そのため、受贈者の譲渡所得の金額の計算において、贈与者が資産を取得するのに要した費用が引き継がれ、贈与者の資産の取得の時期も引き継がれて、贈与者と受贈者の保有期間が通算されることとなる。