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最高裁昭和46年11月9日第三小法廷判決
(事件概要)
Y:(被告・控訴人・上告人)税務署長
Xは利息制限法を超える利率で融資を行っていた。制限超過利息は未収のものであっても総収入額に含まれるとして増額更正処分。Xは不服申し立て。
1.論点
違法または無効な行為によって生じた経済的利得も所得に含まれるか。弁済期の到来した未収の部分についてはどうか。
2.判旨
(現実に収受された場合)
現実に収受された超過部分が課税の対象にならないとは言えない。
(未収の場合)
収入実現の蓋然性があるとはいえず、制限超過の利息・損害金は約上の履行期が到来しても未収である限り、旧所得税法10条1項に言う「収入すべき金額」に該当しない。
3.解説
日本の所得税法は、全ての経済的利得を所得路する包括的所得概念を採用している。所得税基本通達36-1では、総収入金額に算入すべき金額はその収入の基因となった行為が適法であるかどうかを問わないと定めている。また、所得税法施行令274条1項で、無効な行為により生じた経済的成果がその行為の無効であることに起因して失われたことを更正の請求を認めるべき事実としてあげている。つまり、無効な行為であっても、それが失われるまでは課税対象であることを言っている。
違法な利得が所得とされることの半面、それが事後的に失われた場合の一定の調整措置は以下の通り。
- 違法な利得があった年の所得を遡及的になかったことにする方法
(所得税法152条、同施行令274条1項)
- 利得が失われた年の所得の計算において必要経費への計上等を認める方法
(所得税法51条2項、同施行令141条3号)
事業所得等の金額のうちに含まれていた無効な行為により生じた経済的効果がその行為の向こうで生じた損失額は、その損失の生じた日の属する年分において必要経費に算入する規定。
これは無効な行為で生じた経済的成果を現実に変換したときであり、返還債務が確定しただけでは足りないとしている(東京高判平成23年10月6日)。