最高裁昭和53年2月24日第二小法廷判決
(事件概要)
X:(原告・被控訴人・被上告人)土地を賃貸
Y:(被告・控訴人・上告人) 税務署長
Xは訴外Aに土地を賃貸。Aに対し賃料増額請求の訴えを起こし、最終的にはAに対し、建物の明け渡し、延滞賃料等の支払い、担保を条件とする仮執行宣言を付した判決を言い渡した。その継続中にXがAから受徴した弁済を各年分の収入金額に計上されるとして、Yが更正及び過少申告加算税の賦課決定処分。
1.論点
権利確定基準と管理支配基準についての重要な判決であり、仮執行宣言に基づいた金員の取得があったときに収益として計上するのか否か。
2.判旨 破棄自判
現実の収入がなくとも、その収入の原因となる権利が確定した場合には、その時点で所得の実現があったものとして権利確定時期の属する年分の課税所得を計算する建前となっている。
仮執行宣言付判決は上級審において取消変更の可能性があり、解除条件付のものであり、確定的に金員の取得をするものとは言えないが、未確定とはいえ請求権があると判断され、失効力を付与された判決に基づき、有効に金員を取得し、自己の所有として自由に処分することができるため、この金員取得によって所得が実現したとみるのが相当。
3.解説
権利確定は一般化するのが困難であり、それぞれの権利の特質を考慮し決定されるべきものとしている。権利確定基準は納税者の恣意を許さず、課税の公平を期すための調整政策上の技術的見地から採用されたとする。
権利確定基準に基づいて現実収入の前に課税されれば、納税資金不足の問題が生じるが、その場合には更正の請求により救済されるとしている。