最高裁昭和55年7月1日第三小法廷判決
(事件概要)
X:(原告・控訴人・上告人)Aの長男であり相続人
Y:(被告・被控訴人・被上告人)国
A:Xの被相続人
B:Aの長女、
C:Aの養子
B及びCが相続税を完納しなかったため、Xが連帯して納付義務があるとし、徴収のためX所有の宅地を差し押さえ。Xは宅地を訴外F会社に売却。Fは国税局長に対し、Xの連帯納付義務の代位弁済としてB及びC分の相続税等を支払い、Fは当該代位弁済の求償権をもってXに対する宅地の売買代金債務と対等額で相殺。
Xは連帯納付義務は、手続上共同相続人に連帯納付義務を追及できない。これを国税通則法15条1項の「国税を納付する義務」と解しても、付加課税方式により確定されるものと解するしかなく、その決定は同法32条3項により納付すべき税額等を記載して賦課決定通知書を送達すべきで、送達のない場合、連帯納付税額の確定はされておらず、連帯納付義務は不存在であると主張。
1.論点
共同相続人の連帯納付義務に対して、課税庁から特別な手続きを要するか否か。
2.判旨 上告棄却
連帯納付義務は相続税法が相続税徴収の確保を図るため、相互に各相続人等に課した特別の責任であって、その義務履行の前提条件をなす連帯納付義務の確定は、各相続人等の固有の相続税の納税義務の確定という事実に応じて法律上当然に生ずるものであるから、格別の確定手続きを要するものではない。
3.解説
平成24年度改正等で、納税義務者の相続税につき、国税通則法37条の督促をした場合に、督促状を発した日から1月を経過する日までに当該相続税が完納されないときは、当該相続税に係る連帯納付義務者に対し、当該相続税が完納されていない旨、その他の財務省令で定める事項を通知するものとするとされるなど、手続きの整備が図られた(法34条5項)。