既に遺言書は書いておいたから安心だと思ったのですが、配偶者居住権を書き忘れていました。
1.配偶者居住権と遺言書
配偶者居住権は、2020年4月1日以降に開始した相続について適用されます。そのため、配偶者について、配偶者居住権を遺贈する旨の内容の遺言書は、来年4月1日以降に作成する必要があります。そのため、配偶者居住権を利用すると決めた場合には、既に作成している遺言書があれば書き直しが必要となります。
2.配偶者居住権を指定する遺言書の例
第〇条
遺言者は、遺言者の有する下記の不動産を遺言者の長男〇〇(昭和〇〇年〇月〇日生)に相続させ、当該不動産についての配偶者居住権を遺言者の妻○○(昭和〇〇年〇月〇日生)に取得させる。
記
所 在 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目
地 番 〇番〇
地 目 宅地
地 積 〇.〇m2
所 在 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目
家屋番号 〇番〇
種 類 居宅
構 造 木造スレート2階建て
床 面 積 1階 〇.〇m2
2階 〇.〇m2
以上
3. 注意事項
節税という観点で見れば、この制度を用いるかどうかは、自宅土地について相続税評価額を8割減とする「小規模宅地等の特例」を利用する方法との比較になると思われます。
配偶者居住権は、相続開始時点にその自宅に居住していた配偶者だけに認められる権利で、配偶者であれば無条件で受けられる小規模宅地等の特例と異なり、別居夫婦は利用することができません。また、配偶者居住権は登記して初めて第三者に対抗できる権利になります。
厄介なことに配偶者居住権は売却できないため、この権利がついている不動産は売却も困難となります。
また、配偶者居住権は放棄や、配偶者と所有者の合意で解除できます。そうなりますと、放棄や合意解除の時点で配偶者から建物所有者への配偶者居住権の贈与とされて、贈与税の課税対象となります。