オフィスビルを運営していますが、ある会社が夜逃げしました。しかも代表とも連絡が取れません。しかも中に荷物があったままの夜逃げです。数か月分の滞納家賃もあり、やむを得ず、貸倒損失として処理しました。
1.ポイント
賃貸経営をしている方なら起こりうる夜逃げですが、せめて未回収部分は貸倒損失として計上して税金の負担は減らすために、税務上の要件を満たしておく必要があります
2.解説
税務上、貸倒損失となり損金計上できる要件は次の図のように通達に規定されています。
区分 | 発生した事実等 | 対象金額 | 損金算入時期 |
法律上の貸し倒れ基通9-6-1 | 更生計画許可の決定又は再生計画認可の決定による切り捨て | 切り捨てられることとなった部分の金額 | その事実の発生した日を含む事業年度 |
特別清算に係る協定の認可による切り捨て | 債権者集会の協議決定で合理的な基準により債務者の負債整理を定めたもの 行政機関、金融機関その他第三者のあっせんによる当事者間の協議により締結された契約で合理的基準によるもの | ||
関係者の協議決定による切り捨て | |||
債務者に対し書面による債務免除(債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その弁済を受けられないと認められる場合に限る) | 債務免除の通知をした金額 | ||
事実上の貸し倒れ基通9-6-2 | 債務者の資産状況、支払能力等からみて金額が回収できないことが明らかとなったこと(担保物のない場合に限る) | 金銭債権の金額※1 | 回収できないことが明らかとなった事業年度 |
形式上の貸し倒れ基通9-6-3 | 債務者との取引停止後1年以上経過したこと(担保物のない場合に限る) | 売掛債権の額から備忘価額を控除した金額※2 | 取引停止後1年以上経過した日以後の字事業年度 |
同一地域の売掛債務の総額が取り立て費用に満たない場合において督促しても弁済のないこと | 弁済がないとき以後の事業年度 |
※1:金銭債務の一部の金額について損金算入することができません。
※2:貸付金その他これに準ずる債権は、形式上の貸借の対象となりません(基通9-6-3)
上記のように貸倒損失が法人税法上認められるためには、各種要件を満たさなければなりません。回収ができなそうだなと思ったときに損金計上したとしても認められるわけではありません。