海外投資は日本と同様に相続対策になると思っていたのですが、必ずそうなるとは限らないと伺いました。
1.ポイント
国外にある不動産も日本の不動産と同じように相続税対策になるとは限りません。また、海外にあるからと言って無税であるわけでもありません。特に国外に5,000万円を超える財産を持っている場合には、税務署に報告しなければならないことに注意が必要です。
2.解説
国内にある不動産の評価は、土地については原則として路線価評価または倍率評価を適用し、建物については固定資産税評価を適用します。一般的には、路線価評価は時価相場の70%〜80%程度、固定資産税評価は時価相場の60%〜70%程度といわれております。また、賃貸物件であれば、借家権や借地権を加味して、さらに評価が低くなります。
一方、国外にある不動産の評価は、原則として、現地での売買事例価額、地価の公示制度に基づく価額及び鑑定評価額等を参考に評価します。つまり、不動産を購入した後、相場が値上がった場合には相続財産の評価が上がることになります。また、為替の換算をする必要があり、円安になった場合にはさらに評価が上がる可能性があります。
相続対策として国内にある不動産を購入するケースはありますが、国外にある不動産を購入した場合には、評価が上がってしまい、相続対策にならない場合があります。
また、近年、日本の居住者の国外財産保有が増加傾向にある中で、国外にある財産についての申告の仕組みとして、国外財産調書制度が導入され、平成26年1月から施行されております。制度の概要は以下のとおりです。
項目 | 内容 |
提出義務者 | その年12月31日において5,000万円をこえる国外財産を保有する居住者 |
記載事項 | 提出者の氏名、住所又は居所、国外財産の種類、数量、価額 |
提出期限 | その年の翌年3月15日までに税務署長に提出する(所得税の確定申告が不要な場合でも提出する) |
インセンティブ | 提出有無により過少申告加算税等が本税の5%の相当額、加減算 |
罰則規定 | 1年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
ここでインセンティブとは、所得税や相続税の申告について、国外財産に関する申告漏れがあったときのペナルティ(過少申告加算税等)の取り扱いが異なる点です。申告漏れがあった財産について、国外財産調書に記載されていたものについては、その申告漏れに係る部分の過少申告加算税等について5%減額されます。
一方で、国外財産調書に記載がなかったものについては、その申告漏れに係る部分の過少申告加算税等について5%加重されます。
罰則は上記の表に記載したとおりですが、罰則となるケースは、①偽りの記載をして国外財産調書を提出した場合、②正当な理由がなく提出期限内に国外財産調書を提出しなかった場合です。
国外不動産への投資については、利回りや為替変動を十分に考慮して検討すべきであり、①相続税の評価が国内不動産と異なること、②国外財産調書の提出をしなければならないこともあわせて検討した方がよいでしょう。