自社株で納税するつもりが分割協議できず・・・

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父に代わって、長男である自分が、事業承継を行うことになりましたが、手続きをする前に父が他界。自社株以外財産がなく、弟が自社株を欲しいと言い出しました。

1.ポイント
事業承継の意志が固まった段階で、父に遺言書を作成しておいてほしかったケースです。

2.解説
父が全株所有していた株式は、遺産分割協議が成立するまでの間、法定相続人である兄弟で共有することになります(配偶者が他界していれば)。遺産分割協議が成立するまでの間の株主権の行使は、株式の共有持分の過半数をもって定めるとされていますが、過半数を有する者がいないため、同族会社の同意がなければ、議決権の行使も困難な状態です。

また、未分割の場合には、自社株譲渡の特例のほか、相続税の計算上、非上場株式等に係る相続税の納税猶予、小規模宅地等の特例、配偶者の税額軽減などの税負担を抑える特例の適用が受けられないことになります。

同族会社による自社株の買取は、譲渡をした個人株主の税金計算上、譲渡対価の一部が配当とみなされ、総合課税の対象となり、超過累進税率により課税されます。しかし特例があります。

(a) 相続人が株式を発行会社へ売却した場合のみなし配当の特例
・相続税の負担がない個人株主
自己株式の譲渡ですので、配当課税となります
・相続税の負担がある個人株主
相続または遺贈により財産を取得した個人で相続税額の負担がある者が、相続開始があった日の翌日から3年10ヶ月以内に、その取得した自社株を発行会社に譲渡した場合には、株主は自己株式の譲渡ですが、配当課税ではなく株式分離課税となります。

(b) 相続税額の取得費加算特例
相続または遺贈により取得した自社株を、相続開始のあった日の翌日から3年10ヶ月以内に譲渡した場合には、以下の算式により計算した金額を譲渡所得の取得費に加算できるため、譲渡の税金を抑えることができます。

これらの特例は、相続または遺贈により取得した株式が対象となるため、遺言書がない場合には、特例の適用期限内に遺産分割協議を成立させ、譲渡を実行する必要があります。

遺留分を侵害しない遺言書があれば、長男への事業承継がスムーズに進み、納税資金確保のための自社株買いも実行できるはずでした。

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