東京地裁平成24年10月9日判決
(事件概要)
X:(原告)超硬工具の製造および販売を行っている法人
Y:(被告・被控訴人・被上告人) 税務署長
Xは事前確定給与の届け出を行った。その後厳しい経済状況による業績の悪化を理由に夏季賞与を減額。変更届は行わなかった。Xは夏季賞与については申告調整で損金不算入、冬季賞与は事前確定届出給与に該当するとしてその額を損金算入して確定申告。Yはそれに該当しないとして損金不算入とする更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分。
1.論点
一つの職務執行期間中に複数回にわたる役員賞与の支給がされた場合の事前確定届出給与該当性について。
2.判旨 請求棄却
役員給与の支給が税務署長に届け出された事前の定めに係る確定額を下回ってされた場合であっても、当該役員給与の額を損金の額に算入すれば、事前の定めに係る確定額を高額に定めて枠取りをし、支給額を減額にして損金の額をほしいままに決定し、法人税課税を回避する弊害が生じる。
特別の事情がない限り、個々の支給ごとに判定すべきではなく、当該職務執行期間の全期間を一個の単位として判定すべき。全ての支給が事前の定めの通りにされたのであれば、問題なし。逆に1回でも事前の届け出通りにされなければ、全体でもされていなかったと考えるべき。
3.解説
Xは夏季賞与の減額を法人税法施行令69条3項の変更届け出期限までに税務署長に対してその変更の届け出をすれば足りる案件であった。
1回でも事前の届け出通りに役員賞与が支給されなかった場合、事前の定めに従った冬季賞与までも損金不算入となるかが問題となったが、結果として1回でも事前の差までのお降りにされたものではないものがあれば、全愛として事前の定めの通りにされなかったとするのが相当とした。