遺言書には不動産は長男に、現預金は長女にと書いてありましたが、それを知らずに現預金を相続税の納税資金に使ってしまいました。しかも土地が目減りして、、、
1.ポイント
(a) 不動産を相続させる相続人には、相続税相当額の現金も付けておくべきであった。
(b) 遺言書を作成する際には、相続税が払えるかどうか、遺留分を侵害していないかどうかをチェックしておくべきであった。
(c) 遺言書については、状況の変化に応じて見直しをしておくべきであった。
2.解説
遺言書は、遺言を書く人の意思が尊重されるべきです。そのため、誰に何をあげようと、遺言者の自由なのですが、分配の際に①相続人全員がそれぞれに相続税を金銭で一括納付できるか、および②遺留分を侵害していないか、の2点をチェックしておくことが、相続人間でのトラブルを最小限にとどめるために必要といえます。
遺留分を侵害するような遺言があった場合には、遺留分の減殺請求により一方の相続人が他の相続人等から不足分を取り戻すことができますが、当該減殺請求について金銭で解決することを選択した時は、減殺請求を受ける側はその分の資金調達ができず予定外に不動産を処分しなければならなくなる可能性があります。また、相続税は金銭一括納付が原則であるにもかかわらず、遺言で不動産しかもらわなかった場合には、納税のための資金調達が必要となってしまいます。延納で相続税を分割払いするという方法もありますが、担保提供できるものがない場合には延納も難しくなってしまいます。
そのため、相続開始後に慌てて土地を売却しなければならないとなると、売りやすい土地から切り売りすることもやむを得ず、また、買主から足元を見られて買い叩かれてしまうこともあります。
不動産については、ほかにも相続登記のための登記費用やその後の固定資産税、建物にいたっては修繕費など何かと費用がかかるものです。その点も踏まえて、各相続人には不動産と金融資産をバランスよく相続させることも検討する必要があります。