最高裁昭和49年3月8日第二小法廷判決
(事件概要)
X:(原告・被控訴人・被上告人)
Y:(被告・被控訴人・被上告人)国
税務署長はXに対して、所得税の更正処分を行い、滞納処分により徴収。その金額はXが貸し付けたときに生じた利息損害金を所得として生じたものであった。その後、Xは元本の回収すら失う恐れが生じ、利息損害金債権を放棄。これが回収不能となったため、国に対して、不当利得返還請求訴訟。
1.論点
旧所得税法下において、貸倒損失は徴税後返還できるか
2.判旨 上告棄却
現実の収入がなくとも、収入の原因である権利が確定的に発生した場合は、その時点で課税所得を計算するという建前を採用している。しかし非事業上の債権の貸し倒れに何らの救済も認めないのは相当でない。
貸倒の存否及び数額について、課税庁が判断し、その債権確定時の属する年度における実所得が貸倒により回収不能となった額だけ存在しなかったものとして改めて課税所得及び税額を算定し、それに応じて課税処分の全部または一部を取消、徴税後であればその部分の税額相当額を納税者に返還する措置を取ることが合理的
3.解説
昭和37年の法改正で、現在の所得税法64条及び152条に相当する定めが導入。