![](https://tax-inquiry.business-relations.co.jp/wp-content/uploads/2020/09/201004-304x202.jpg)
最高裁平成23年9月22日第一小法廷判決
(事件の概要)
X:(原告、控訴人、上告人)
Y:(税務署長)
平成5年4月から所有する土地を平成16年1月30日にXは売買契約を締結し、同年3月1日に買い主に引き渡した。平成16年分の所得税の確定申告書を提出。
譲渡によって長期譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額について、他の各種所得との損益通算が認められるべきであり、更正の請求により還付されるべき。
改正法によって、租税特別措置法31条5項2号で認められた損益通算を同年1月1日にさかのぼって廃止する。これは納税者に不利益な遡及立法であり憲法84条に違反する。
1.論点
租税遡及立法の合憲性
2.判旨 上告棄却
所属税の納税義務は暦年の終了時に成立。改正法が施行された平成16年4月1日時点においては納税義務は成立していない。本件損益通算廃止に改正後の規定を同年1月1日から3月31日までの間にされた長期譲渡に適用しても事後的に変更することとはならない。
憲法84条は、課税関係の法的安定性が保たれる趣旨を含む。
納税者は損益通算による租税負担の軽減に係る期待に沿った結果を得られなくなるが、納税義務を加重される等の不利益を受けるものではない。
綜合的に考えれば、本件改正附則が憲法84条の趣旨に反するものとは言えない。
3.解説
事前に遡及立法情報を得て十分な経済的リスク対応ができる納税者と、その対応が困難である納税者との不公平をいかに評価するか。