不動産売買仲介業を営んでおります。配偶者と死別した都内に在住する年金暮らしの女性のお客様より、老人ホームの入居金を捻出するため、所有していた自宅と別荘を売却したい旨のご相談があり、のちに支払うべき税金の金額もアドバイスしてほしいという要望がありました。そうすると、社会保険料が賦課されることがわかり、その件についてアドバイスがなかったことがクレームになりました。
1.ポイント
個人所得が増えると、当該個人に賦課される社会保険料も増えます。譲渡所得が発生すると通常の年よりも所得が大幅に増大する場合が少なくありません。不動産売却にかかる譲渡所得と社会保険料の賦課の関係につき、社会保険料についてわからなければ社会保険労務士にご相談下さいなど一言あった方が良かったと思われます。
2.解説
臨時的な社会保険料の負担を減らすという観点からいえば、当該物件は当年に売却するのではなく、翌年に売却すべきであったということになります。
翌年に物件A及び物件Bの譲渡を集約させても、翌年の所得によって算出される社会保険料の額は、B物件のみを翌年に譲渡する場合と同額となり、当年の所得は譲渡所得がなくなるので、当年の所得により算出される社会保険料の額は以前どおり最低額で済むことになります。すなわち、社会保険料が臨時的に最高額となるのは、1年だけで済んだわけです。
不動産業者に関わらず、税理士であっても、所得税等の税金については専門ですが、関連業務である法務や社会保険については的確なアドバイスができない場合もありえます。弁護士、不動産鑑定士、また、社会保険労務士と士業のネットワークを築くことで不動産業のお客様に対する的確なアドバイスすることを考えてみても良いでしょう。