東京高裁平成27年5月13日判決
(事件概要)
X:(原告・被控訴人)自動二輪車等の製造および販売を主たる事業とする内国法人
Y:(被告・控訴人)国
A:ブラジルの現地法人(マナウスフリーゾーン)
XとAは自動二輪車の部品等の販売及び技術支援の役務提供取引を行う。YはXの対価の額は租税特別措置法第66条の4第2項及び同法施行令39条の12第8項に定める残余利益分割法により算定された独立企業間価格に満たないとして、上記各事業年度の所得を増額する各更正を行ったところ、これを不服としてXが取り消し訴訟に及んだ。
1.論点
残余利益分割法の適用性や比較対象法人選定の適切性について
2.判旨 控訴棄却
(1)残余利益分割法の適法性
平成23年政令第199号による措置法施行令改正前において、残余利益分割法を用いることが租税法律主義に違反することにはならない。
(2) 独立企業間価格の算定単位
XとAとの間の自動二輪車の組み立て部品の販売取引を主要部分として、付随的にXとA等との間の完成自動二輪車の販売取引、自動二輪車の補修部品の販売取引、自動二輪車の製造設備等の販売取引、技術支援の役務提供取引及び無形資産の使用に係る取引を組み合わせて構成され、B及びCとの取引を含めて一体として行われたもの。BとCとの取引を含めて一の取引とみて独立企業間価格を算定するのが相当。
(3) 基本的利益算定の適法性
ブラジル側比較対象企業は、マナウス税恩典利益を享受していないという点で、A等との比較可能性を有する者ではないから、処分行政庁が上記の差異につき、何らの調整も行わずにブラジル側基本的利益を算定したうえ、本件独立企業間価格を算定したことには誤りがあるというべき。
3.解説
複数の取引のそれぞれに係る棚卸資産の販売価格の設定が、各取引ごとに独立して行われるのではなく、それぞれの取引の関連性を考慮して行われるのではなく、それぞれの取引の関連性を考慮して行われるような場合や、複数の取引が、その目的、取引内容、取引数量等から見て、一体として行われているような場合には複数の取引を一の算定単位とすべきものとしている。