発注者の契約書を原本とし、当社では契約書を写しとして作成し、契約当事者である発注者及び弊社の署名押印したものを保管しておきました。その写しには印紙を貼っていませんでした。
1.ポイント
印紙税法上の課税対象として、「契約当事者の双方又は文書の所持者以外の一方の署名又は押印があるもの」と規定されているため、自社分の控えとして印紙を貼らず、念のためにとはいえ契約当事者である発注者および自社の署名押印をした契約書を保管していれば、その写しには印紙を貼らなければなりません。
2.解説
契約書は、契約の当事者がそれぞれ相手方当事者などに対して成立した契約の内容を証明するために作られますから、各契約当事者が1通ずつ所持するのが一般的です。この場合、契約当事者の一方が所持するものに正本又は原本と表示し、他方が所持するものに写し、副本、謄本などと表示することがあります。しかし、写し、副本、謄本などと表示された文書であっても、おおむね次のような形態のものは、契約の成立を証明する目的で作成されたことが文書上明らかですから、印紙税の課税対象になります。
- 契約当事者の双方又は文書の所持者以外の一方の署名又は押印があるもの。
- 正本などと相違ないこと、又は写し、副本、謄本等であることなどの契約当事者の証明のあるもの。
なお、所持する文書に自分だけの印鑑を押したものは、契約の相手方当事者に対して証明の用をなさないものですから、課税対象とはなりません。
また、契約書の正本を複写機でコピーしただけのもので、上記のような署名若しくは押印又は証明のないものは、単なる写しにすぎませんから、課税対象とはなりません。
同じく、ファックスや電子メール等により送信する場合も正本等は送付元に保存され、送付先に交付されておらず、送付先で出力された文書は写しと同様であり、課税対象とはなりません。
このように、印紙税は、契約の成立を証明する目的で作成された文書を課税対象とするものですから、一つの契約について2通以上の文書が作成された場合であっても、その全部の文書がそれぞれ契約の成立を証明する目的で作成されたものであれば、すべて印紙税の課税対象となります。
そのため、契約書の写しが課税文書に該当しないようにするには、次の2点が重要なポイントになります。
- 契約書の上から署名や押印をしないこと。
- 「この契約の証として本契約書一通を作成して乙がこれを保有し、甲はこの写し(コピー)を保有することについて、甲乙双方が確認した」等の文章を契約書内に入れること。