移転価格税制において、親会社の提供役務のうち何が株主活動なのか

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日本本社が海外子会社に対して行う役務提供でも、それが株主としての権利の行使や義務の履行であれば相当の対価を収受すべき役務提供には当たらないと言われていますが、ここでいう株主としての権利行使や義務の履行(株主活動)とはなんでしょうか。

1.株主活動とは

相当の対価を収受すべき役務提供には該当しない株主活動とは、移転価格事務運営要領において、以下の通りとなっております。

  • 親会社が子会社等に対して行う特定の業務に係る企画、緊急時の管理、技術的助言、日々の経営に関する支援等は、株主としての地位を有する者が専ら株主として自らのために行うものとは認められないことから株主活動には該当しない。
  • 親会社が子会社等に対する投資の保全を目的として行う活動で、かつ、当該子会社等にとって経済的又は商業的価値を有する者は役務の提供に該当し、株主活動には該当しない。

なお、具体例については「移転価格税制の適用に当たっての参考事例集」において示されているので、以下列挙します。

2.株主活動に該当するもの:具体例

(a) 親会社は、自社の株主総会開催のための資料を作成するために必要な子会社の月次財務管理(生産・販売状況)データを自ら収集している。

(b) 親会社は、金融商品取引法に基づく有価証券報告書を作成することを目的として、子会社から送信される連結決算用データのチェックを行い、軽微な数値上の誤りがある場合に子会社に対して修正指示を行っている。

(c) 親会社は、自らの連結財務諸表監査のために外部監査法人が行う子会社の監査に、親会社の財務担当者を同行させている(子会社は所在地国における法令に従って別の監査法人に監査を依頼している)。

3.株主活動に該当しないもの:具体例

(d) 親会社は子会社の経営効率を向上させて収益性を高めるため、子会社の人事政策を決定し、役員候補者の選考のための面接を行うとともに、必要に応じて子会社役員の変更や報酬の見直しを行っている(子会社の役員の変更や報酬の見直し等は、子会社の株主総会等を通じた株主としての権利行使の結果により行われたものではない)。

(e) 親会社は、子会社の事業運営の管理等を行うため、文書等による日常的な業務に係る指示の他に、週1回定期的に行われるTV会議を通じ、子会社の運営方針に関して支持を行っている。

(f) 親会社は子会社の作成した予算原案をチェックするとともに、年間事業計画上問題がある場合には修正指示を行い、子会社はこれに基づき年間予算を作成している。

(g) 親会社は子会社の業務監査が適切に行われるよう、子会社の業務監査に立ち会うとともに、不適切な処理が認められた場合には業務改善指示書の作成等を行っている。

(h) 親会社は、子会社の所在地国における現地法令の遵守状況を監査するとともに、不適切な処理が認められた場合には業務改善指示書の作成等を行っている。

(i) 親会社は子会社が自社の顧問弁護士から助言を受けて締結する非関連者との契約について、事業判断の誤りに係るリスクを減少させるため、親会社の法務担当者による契約内容のチェックを行っている。

(j) 親会社は、子会社の経費削減のため、製品クレームに即時対応するためのコンピューターシステム(親会社と子会社をオンラインで接続)の開発、保守等を一括して行っている。

(k) 親会社は、子会社の財務活動が円滑に行われるよう、子会社の新規設備投資に対する判断、リスク分析及び現預金管理を含む資金調達のアレンジ等を行っている。

(l) 親会社は、子会社の事業効率を向上させるため、子会社から業務上の相談等(緊急時の対応等)があった場合に即時に対応できるよう親会社内の連絡・支援体制を整えている。

(m)親会社は、子会社の事業を円滑に進展させるため、子会社の主要取引先と良好な関係を構築し、子会社が主要取引先と行う取引条件交渉のサポート等を行っている。

(n) 親会社は、子会社が取引先との主要な契約を締結できるよう、子会社の契約に係る締結交渉・意思決定、契約条件の履行(親会社が子会社のために行う履行保証等を含む)等を行っている。

子会社は、これらの活動によって経営効率の向上や業務改善、リスクの減少、経費削減等の便益を得ていることから、当該項目に係る活動は役務の提供に該当する可能性が高く、通常相当の対価を収受すべき活動に該当するものとしています。

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