卸売業や小売業は外部から仕入れた棚卸資産を加工せずにそのまま販売するビジネスですので、仕入・売上・棚卸資産の関係性が比較的明確です。つまり、売上除外や架空仕入、棚卸除外等の操作を行えば、その不正を見抜くことはわかりやすいと言えます。
1.卸売業の税務調査で見るポイント
法人事業概況説明書に、月次の売上や仕入れを記載する項目があり、この数字によって原価率や推計在庫が明確になります。
- 原価率
売上原価/売上高で算定できますが、売上除外や架空仕入が行われれば、その月の原価率は高くなります。
原価率:(期首在庫+期中仕入高-期末在庫)÷当期売上高
- 推計在庫
在庫自体は法人事業概況説明書に記載はありませんから、以下の算式で推計することになります。
期首月の月末在庫=(期首在庫+当月仕入高)-当月売上高×原価率
2か月目以降の各月末在庫=(前月末在庫+当月仕入高)-当月売上高×原価率
ここで原価率は(a)の算式を用いて計算します。
2.原価率や推計在庫でどうわかるか
売上除外や架空仕入が行われれば、その年度のトータルの原価率が上昇し、それが行われた月の推計在庫が増加し、その前月の推計在庫は逆に減少します。不正月の推計在庫の増加が目につきます。
棚卸除外の場合、トータルの原価率が上昇し、期末棚卸の有り高そのものが少なくなり、前年対比によってその異常値を確認できます。