事業者間で収益費用の認識基準が異なる場合

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個人で貸家を保有しており、自らが代表を務めるいわゆる資産管理会社へ貸家を賃貸しています。家賃については、翌月分を当月末までに入金する、という一般的な契約にしており、資産管理会社と私個人とともに、1ヶ月分の前受家賃(前払家賃)が計上していました。

1.ポイント
法人については発生主義により収益を計上しますが、個人においては必ずしもそうではありません。法人と個人とで収益費用の計上のタイミングが異なる場合があります。

2.解説
賃貸料収入の計上時期については、法人税法基本通達2-1-29において「資産の賃貸借契約に基づいて支払を受ける使用料等の額は、前受けに係る額を除き、当該契約又は慣習によりその支払を受けるべき日の属する事業年度の益金の額に算入する。」と記載されています。すなわち、前受けに係る分については、益金とすることなく、翌月以降に繰り越すことができます。一方、法人税法ではなく、所得税法上の規定については、基本通達36-5で次のような記載がされています。

「不動産所得の総収入金額の収入すべき時期は、別段の定めのある場合を除き、それぞれ次に掲げる日によるものとする。

契約又は慣習により支払日が定められているものについてはその支払日、支払日が定められていないものについてはその支払を受けた日(請求があったときに支払うべきものとされているものについては、その請求の日)」

つまり、所得税法上では前受家賃といった処理ではなく、支払日で判断されることになります。発生主義ではないと思われるでしょうが、個別通達で個人でも家賃収入の発生主義と認める場合があり、それが以下の場合です。

(a) 不動産所得に関して帳簿書類を備えて継続的に記帳する。
(b) 不動産収入の全部について前受収益および未収収益の経理を行う。

資産管理会社については、法人であるため、支払家賃の処理については発生主義により計上します。すなわち、翌月分を当月末までに支払った場合、その分は前払家賃として費用の計上を繰延べます。一方、個人の確定申告については、今回の事例のケースでは現金主義で収益を計上しなければならなかったことになります。すなわち、翌月分の家賃を前払で入金されていたとしたら、入金された時点において収益として計上することになります。

資産管理会社の計上基準と同様に発生主義において処理をしたい場合は、日々帳簿書類を備えて記帳し、青色申告にて確定申告を行いましょう。そうすれば、同じ収益基準で認識することができます。

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