海外に10年勤め、その前に国内で10年勤めていました役員が、この度退職することとなり、退職慰労金が支払われることになりますが、非居住者であった期間に行った勤務に対する退職金についても、退職控除後の2分の1課税の適用が受けられるのでしょうか。
1.役員退職給与に関する所得税の取り扱い
退職金は、役員も使用人も原則同じ取り扱いとなりますが、非居住者の期間があった場合には異なる取扱になります。使用人に対する退職給与の場合、非居住者であった期間に行った勤務に基因するものは国内源泉所得から除かれますが、一方で、役員に対する退職給与は、内国法人の役員として非居住者であった期間に行った勤務に基因するものも国内源泉所得になります。
2.特定役員退職手当等に係る退職所得の金額
特定役員退職手当等に係る退職所得の金額は、退職手当等の収入金額から退職所得控除額を控除した残額となり、残額に対する2分の1課税の累進緩和措置がなくなっています。特定役員退職手当等とは、退職手当等のうち、役員等としての勤続年数が5年以下であるものが、退職手当等の支払者からその役員等勤続年数に対応する退職手当等として支払いを受けるものを言います。
3.非居住者であった期間の役員等の勤続年数
役員等勤続年数が5年以下の場合、退職所得に係る2分の1課税の適用は受けられません。
海外駐在などで非居住者であった期間の役員等勤続年数の算定は、役員等として勤務した期間により計算するものとされており、非居住者として勤務した期間を除外する旨の規定はありません。
なお、本件の場合、役員等勤続期間が非居住者としての期間を含めた10年間となり、役員等勤続年数が5年を超えるため、退職所得控除後の2分の1課税の適用が受けられます。