アパートの負担付贈与で注意すべきこと

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父はアパートを複数保有しており、私は父から建物3棟の贈与を受け、相続時精算課税制度の適用を受けました。建物のうち1棟のアパートには銀行からの借入金がまだ残っています。この借入金は父が返済せずに、建物を引き継いだ私が返済していくつもりです。しかし、この贈与については負担付贈与になる、ということで指摘を受けました。

1.ポイント

負担付贈与の場合には、相続税評価額ではなく、時価で贈与税を計算しなければなりません。

2.解説

  • 建物の評価額
A棟相続税評価額1,500万円
B棟相続税評価額1,500万円
C棟相続税評価額2,000万円(時価4,000万円)
借入金 1,500万円
  • 当初申告

贈与税:

A棟1,500万円+B棟1,500万円+C棟2,000万円―1,500万円―2,500万円=1,000万円

1,000万円×20%=200万円

  • 税務署の指摘

贈与税:

A棟1,500万円+B棟1,500万円+C棟4,000万円(時価)―1,500万円―2,500万円=3,000万円

2,000万円×20%=600万円

譲渡所得:

1,500万円―4,000万円=△2,500万円

借入金の金額が時価の2分の1未満のため損失はなかったものとされます。

  • 結果

差額400万円の贈与の他、延滞税、過少申告加算税の納付をしました。

建物に家賃収入がある場合、家賃収入の帰属は建物の名義人になります。資産家の方で相続税がたくさんかかるような場合、その家賃収入から経費や税金等を引いた手取部分の現金が蓄積されていき、相続財産の増加となります。そのため、賃貸にしている建物のみを子供に贈与すると、家賃収入の帰属が子供に移転しますから、現金の増加を抑制し、子供のほうで将来の相続税の納税資金を貯めておくことができます。

但し、この建物を贈与するスキームにおいて気をつけなければならないことは「負担付贈与」です。これは、もらった側に債務を負担させることを条件にした財産の贈与をいいます。個人から負担付贈与を受けた場合は贈与財産の価額(時価)から負担額を控除した価額に贈与税が課税されることになります。

また、贈与した親は借入金の負担がなくなりますので、借入金相当で売却したとみなされて譲渡所得課税を受けることになります。その際、借入金の金額が、時価の2分の1未満である時は、譲渡損失はなかったものとみなされ、他の譲渡所得と損益通算をすることができません。負担付贈与の場合の建物の評価額は、相続税評価額ではなく、時価となります。

賃貸している建物には、敷金や保証金等の返還するべき債務を負っているケースがほとんどのため、敷金相当額の現金のやりとりがない時は、負担付贈与に該当し、思わぬ負担となってしまうことが考えられます。負担付贈与にならないよう、敷金相当の現金もあわせて、贈与者から受贈者に移さなければなりません。

この建物を贈与して所得分散をするスキームは、贈与は建物のみのケースが一般的です。土地まで贈与すると贈与税の負担が重くなります。家賃収入は建物に帰属しますので建物のみで問題はないでしょう。また、相続後は、もらった子供が事業を継続しやすくするために、遺言で土地の行き先を決めることも重要です。ただし、土地と建物の所有者が異なることにより、土地の相続税評価額が高くなる可能性もありますので注意しましょう。

今回は相続時精算課税制度で建物を贈与しましたので、将来の相続の時に持ち戻すのは建物だけです。その建物からの家賃収入は持ち戻す必要はありません。ここが大きなメリットの1つです。

その他、親の所得税の負担が大きい時は、資産管理会社を作って会社に売却する、という方法もあります。

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