日本の会社で海外に製造・販売拠点(海外子会社)のあるとき、その海外子会社への親会社から出向はよくあります。出向者の人件費は海外子会社で負担していますが、海外子会社の利益が高いと、親会社からの支援があるのではないかと、税務署の指摘があることがあります。さて、どのようにすべきでしょうか。
1.親会社による無形資産の提供
海外の子会社が日本本社の力を借りないで海外市場を開拓して利益を上げるというのは簡単なことではありません。現実的には、株主と投資先という勘系以上の、経営を支援し、グループ全体の利益を向上される関係であると思われます。そこで、無形の支援について、移転価格事務運営指針において、海外子会社の所得の源泉になっている場合には、日本本社は子会社から相当の対価を収受するべきと考えられています。そのときの無形資産とは次のようなものです(事務運営指針2-11)。
- 技術革新を要因として形成される特許権、営業秘密等
- 従業員等が経営、営業、生産、研究開発、販売促進等の企業活動における経験等を通じて形成したノウハウ等
- 生産工程、交渉手順及び開発、販売、資金調達等に係る取引網
2.親会社の役務提供
日本本社が海外子会社に対して、グループ戦略の一環として以下のような役務提供を行う場合には、海外子会社から相当の対価を収受する必要があります(事務運営指針2-9)。
- 企画又は調整
- 予算の作成または管理
- 会計、税務又は法務
- 債権の管理又は回収
- 情報通信システムの運用、保守又は管理
- キャッシュフロー又は支払い能力の管理
- 資金の運用又は調達
- 利子率又は外国為替レートに係るリスク管理
- 製造、購買、物流又はマーケティングに係る支援
- 従業員の雇用、配置又は教育
- 従業員の給与、保険などに関する事務
- 広告宣伝
日本本社が海外子会社に対して行う役務提供であっても、それが株主としての権利行使や義務の履行であれば、対価を収受すべき役務提供には該当しないと考えます(事務運営指針2-9(3)ロ)。
3.回収額
回収額については、金額の適正性や妥当性が問われます。その金額は、同様のサービスをグループ外の第三者から受けた場合に支払うこととなる金額、つまり独立企業間価格が基準となります。親会社から海外子会社に対して、契約を締結し、移転価格上相当な金銭の授受であれば、親会社においては益金計上、子会社においては損金計上ができると思われます。これらが帳簿で確認できず不明瞭だったり、過度にどちらかに有利な契約となっていれば、寄付金課税のリスクが生じます。