建築業を営む業者ですが、新たな事務所を建築しています。使用していた事務所の取り壊し費用と、新たな事務所の建設にかかった費用を、他の現場と同様に未成工事支出金として計上しました。
1.ポイント
同じ不動産の建築でも、販売用不動産と自社で事業用として使用する不動産では、取り扱いが異なります。販売用不動産と自社使用の不動産ごとに発生した材料費、労務費、建築に係る費用を区別し、自社使用の不動産については、工事原価ではなく、販売費及び一般管理費の減価償却で処理する必要があります。
2.解説
(1) 自己が建設等をした減価償却資産の取得価額
自己の建設等に係る減価償却資産の取得価額は、その資産の建設等のために要した原材料費、労務費及び経費の額とその資産を事業の用に供するために直接要した費用の額の合計額となります。(法令54①二)>
(2) 取り壊した建物の帳簿価額の取壊損失の取り扱い
法人が有する建物でまだ使用できるものを取り壊して、これに代わる建物を取得した場合には、その取り壊した建物の取り壊し直前の帳簿価額は、その取り壊した日の属する事業年度の損金の額に算入します。(法基通7-7-1)
不動産建築業者が建設する不動産のうち販売用の不動産と自社使用の不動産では、その取り扱いが異なります。販売用不動産は、未成工事支出金として、工事完成基準又は工事進行基準等により工事完成高に対応させ原価処理します。これに対し、自社使用の不動産については、原価処理ではなく減価償却費として耐用年数に応じて費用計上することになります。また、従前より使用していた事務所を取り壊した場合の旧事務所の帳簿価額は、取り壊した日の属する事業年度に除却損として計上します。
また、一部をモデルルームとして改装する場合等のリフォームもこれに該当します。自社使用の場合は特に労務費に関して見落としがちですので、通常の未成工事支出金計上と同様に、工事日報等の記録を基に計上することをお勧めしておきます。