3月決算法人で、令和元年10月に完成した建設工事について、目的物の完成前に行った当該建設工事のための課税仕入れの金額について未成工事支出金として経理処理しています。そこで売上高は消費税の新税率(10%)を適用しました。仕入税額控除の特例を適用していますので未成工事支出金についても消費税の新税率(10%)で仕入税額控除の計算をしてもいいでしょうか。
1.ポイント
未成工事支出金とは、建設工事が未完成で、未だ引渡しを終えていない工事に直接要した外注費等を管理し、工事が完成するまで、資産として繰延べるための勘定です。未成工事支出金として経理処理している場合であっても、原則として当該課税仕入れを行った日の属する事業年度において仕入税額控除を行います。つまり、仕入税額控除の特例の適用をしている場合は、仕入税額控除の時期は令和元年10月にして問題ありませんが、令和元年9月までに、目的物の引渡もしくは役務提供を受けている外注費等の消費税は旧税率(8%)で仕入税額控除の計算を行うことになります。
2.解説
仕入税額控除の時期の特例はありますが、消費税率の特例はありませんので、あくまでも外注費は役務が完了した日、原材料費は購入した日が令和元年9月30日までは旧税率(8%)、令和元年10月1日以降は新税率(10%)になります。
建設工事に係る完成前に行った外注費等の課税仕入れに係る支払対価の額については、収益費用の対応の観点から未成工事支出金として経理処理しますが、この場合においても、その課税仕入れの時期は、原則として、外注費は役務が完了した日、原材料費は購入した日が課税仕入れをした日になります。
未成工事支出金は仮勘定であり、建設工事が完成した時点で一括して完成工事原価に振替します。建設工事が完成して相手方に引き渡した日に、未成工事支出金として経理処理された課税仕入れにつき課税仕入れがあったものとして取り扱うことが、継続適用を条件に認められています。
未成工事支出金は税務調査で指摘を受けやすい項目です。収益費用の対応の原則から直接原価と間接費の配賦を日頃から管理しておきましょう