最高裁平成6年6月21日第三小法廷判決
(事件概要)
X:(原告・控訴人・上告人)土地・建物・駐車場の所有者
Y:(被告・被控訴人・被上告人) 税務署長
A:Xとその妻の同族会社
XはAと賃貸契約を締結、賃貸料を受領。Aは第三者に貸して、転貸収入を受けている。Yは同種の不動産貸付業を参考に、適正賃貸料を算定、更正を行う。Xはこれの取り消しを求めて出訴。
1.論点
同族会社の転貸方式を用いた不動産賃貸料について、所得税法157条の適用を行う場合の考え方について。
2.判旨 上告棄却
同族会社からの不動産所得は所得税法157条1項に規定する同族会社の行為計算に当たるとしてYがこれを委任して行った更正処分に違法はない。
<原審>
同族会社の行為又は計算が所得税の負担を不当に減少させる結果となると認められるかどうかは専ら経済的、実質的見地において当該行為又は計算が通常の経済人の行為として不合理、不自然なものを認められるかどうかを基準に判断すべき。
不動産の管理料について、適正な管理料を計算するために、同族関係にない不動産管理会社にXと同規模程度の業者の収入を比較検討する方法は合理的な方法であると思われる。
3.解説
不動産所得に関する効率の累進税率を回避するために本人や同族関係者を役員とする同族会社である不動産管理会社を設立して当該同族会社へその所得を移転させることがあり、この時の費用配分の仕方が問題となる。
適正な賃貸料を受け取らないことによりその所得税の負担を不当に減少させたか、所得税額に相当の乖離があれば、通常の経済活動としても不合理、不自然と考える。
不動産賃貸料は、不動産の種類、構造、立地条件、建築年数によって大きく異なるため、非同族の不動産管理会社の得られた管理料割合を用いて適正管理料を求めている。