独立企業間価格の意義(1)~アドビ事件~

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東京高裁平成20年10月30日判決

(事件概要)

X:(原告・控訴人・上告人)Pのソフトウェア販売支援等を行う会社

Y:(被告・被控訴人・被上告人) 税務署長

P:国外関連者 ソフトウェア開発企業

Xは親会社であるアメリカ法人から製品を購入し再販していたが、役務提供補形式へ取引の形態を変更させた結果、粗利は10%低下した。税務署長は、独立企業間価格を算定し、法人税の増額更正及び過少申告加算税の賦課決定処分を行った。

1.論点

独立企業間価格の算定方法の妥当性

2.判旨 原判決取消

  • 基本3法に準ずる方法と同等の方法の意義

棚卸資産の販売または購入以外の取引において、それぞれの取引の類型に応じ、取引内容に適合し、かつ基本3法の考え方から乖離しない合理的な方法

  • Xと比較法人の機能

本件比較対象法人が対象製品であるグラフィックソフトを仕入れてこれを販売するという再販売取引を中核とし、その販促のために顧客サポート等を行うものであるから、Xと本件比較対象法人とがその果たす機能において看過しがたい差異がある。

  • リスクの比較

Xは国外関連者から日本における準売上高の1.5%並びにXのサービスを提供する際に生じた直接費、間接費及び一般管理費配賦額の一切に等しい金額の報酬を受けるものとされ、報酬額が必要経費の額を割り込むリスクを負担していないが、本件比較対象法人はその売上高が損益分岐点を下回れば損失を被る。Xと本件比較対象法人とはその負担するリスクにおいて基本的な差異がある。

  • 結論

本件算定方法は、それぞれの取引の類型に応じ、本件国外関連取引の内容に適合し、基本3法の考え方から乖離しない合理的な方法とは言えない。再販売価格基準法に準ずる方法と同等の方法には当たらない。

3.解説

基本3法と同等の方法を用いることができない場合に当たることについては課税庁が立証責任を負う。

OECDの最終見解が出ていないが、今後、恒久的施設の範囲を拡張する可能性があり、それが国際的租税回避の対抗策となりうる。

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