最高裁平成16年12月23日第二小法廷判決
(事件概要)
X:(原告・被控訴人・上告人)金融機関
Y:(被告・控訴人・被上告人) 税務署長
A:住宅金融専門会社
Xは住専7社に対する減免予定債権額に対する一般貸倒引当金の残高が不十分であり、住専7社に対する債権についての債権償却特別勘定の設定もしていなかったため、直接償却。Aに対する債権を全額放棄。放棄額を損金の額に算入。
Yは上記の損金算入を否認し、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分。
1.論点
金銭債権の貸倒損失を損金の額に算入する要件。
2.判旨 破棄自判
金銭債権の貸倒損失を法人税法22条3項3号の損失の額とするには、当該金銭債権の全額が回収不能であることを要する。債務者の資産状況、支払い能力等の債務者側の事情、債権回収に必要な労力、債権額と取立費用との比較考量、債権回収を強行することによって生じる他の債権者との軋轢等に経営的損失等といった債権者側の事情、経済的環境等も踏まえ、社会通念に従って、総合的に判断されるべき。
本件債権は、Xと農協系統金融機関との交渉経緯から、債権額に応じた損失の平等負担を主張できたとは想定しがたい。Xが本件債権について非母体金融機関に対して債権額に応じた損失の平等負担を主張することは社会通念上不可能。本件債権の残額が回収不能とは客観的に明らか。
3.解説
原審と異なり、最高裁では、債権の実現に向けた納税者の行為可能性に関係する事情を判断の対象に含めた。なお、法律上の貸し倒れは、債権放棄等の経済的利益の供与が債務者に対する寄付金に該当すると判断されるが、寄付金該当性が否定されるためには、その経済的利益の供与につき経済取引として十分に首肯しえる合理的理由が必要。