名古屋高裁平成10年12月25日判決
(事件概要)
X:(原告・控訴人)宗教法人
Y:(被告・被控訴人) 税務署長
A:Xの父 市内に土地と建物を所有
Aが本件不動産を贈与。所有権移転登記を行ったが贈与税の申告を行わなかった。なお、公正証書を作成したのが昭和60年3月14日。移転登記が行われたのは平成5年12月13日。Yは贈与税の決定処分及び無申告加算税賦課決定処分。Xは、処分は既に除斥期間を経過しているとして、異議申し立てをして出訴。
1.論点
贈与は公正証書作成日か、所有権移転登記日か。
2.判旨 控訴棄却
本来不動産の贈与の場合、所有権移転登記を経由するのが所有権を確保するための最も確実な手段であるが、贈与が行われたにもかかわらず何らかの事情で登記を得られない、登記のみでは明らかにできない契約があるときに公正証書を作成する意義がある。
本件は、登記のみでは明らかにできない内容も認められず、登記できなかったことをうかがわせる事情もない。
本件不動産の取得時期は平成5年12月13日の登記日である。
3.解説
贈与税は贈与による財産の取得時に納税義務が成立する。本件では書面による贈与契約を締結した後で意図的に所有権移転登記を遅らせる場合、課税権の除斥期間を経過するまで登記をしなければ、課税庁に契約成立の事実が認識されない限り、贈与税の課税を回避することができてしまう。本件公正証書の作成は仮想行為ないし虚偽表示のようなもの。