定年後の収入は年金のみですが、住民票を海外に移して、海外に移住しようと考えています。移住後は日本においては課税されませんか。
1.居住者と非居住者
我が国の所得税法においては、居住者は全世界所得に対して課税されますが、非居住者の場合、我が国の国内に源泉のある所得(国内源泉所得)に対してのみ課税されます。
居住者とは、国内に住所を有し、または現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人を言います。非居住者とは居住者以外の個人を指します。住所は、住民票の有無というよりも、生活の本拠かどうか客観的事実によって判断されます。なお、国外において継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を持っていれば、非居住者として取り扱われます。
2.非居住者に対する年金課税
非居住者は国内源泉所得にのみ課税されますが、公的年金はその中に含まれますので、非居住者であったとしても我が国で課税されます。そして源泉徴収の対象となります。
3.退職年金に対する租税条約の適用
退職年金については租税条約で別の取り扱いがなされることがあります。退職年金のうち企業年金については、我が国が締結する多くの租税条約で居住地国で課税され、その場合、我が国においては源泉税が課されません。
4.海外における健康保険
ちなみに老後の海外移住においては、健康保険の問題があります。海外に住民票を移して非居住者となった場合は、我が国の公的医療保険から脱退することになりますから、海外での病気に備えて、別途民間の医療保険に加入した方が良いでしょう。但し、民間の医療保険はどの病院でも使えないというデメリットがあります。
そのため、住民票を移さずに我が国の公的医療保険の被保険者のままでいれば、海外療養費制度の適用が受けられます。これは、海外滞在中のけがや病気が対象となります。一度現地で治療費の全額を負担しますが、帰国後に申請しることで我が国の保険診療の範囲内で治療費の一部が給付されます。