海外取引における移転価格課税と寄付金課税

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国外関連者に該当する子会社を有している場合、その子会社との取引に関して寄付金課税されるときがあります。移転価格税制と寄付金課税のどちらが適用されるのか、それらの基準はどのようなものでしょうか。そしてどちらの方が納税者に有利なのでしょうか。

1.国際取引と寄付金課税
法人税法上、寄付金とは、金銭その他の資産又は経済的利益の贈与又は無償の供与のことを指します。そして損金算入額に一定の制限があります(法法37①)。但し、国際取引に係る寄付金は全額損金に算入されません(措法66の4③)。この点国内取引における寄付金は限度額はありますが、一定金額が損金に算入されるという大きな違いがあります。

2.寄付金課税と移転価格税制
寄付金課税と移転価格税制の基準については、以下の課税庁が示した基準(「移転価格事務運営要領の制定について(事務運営指針)(平成13年6月1日付査調7-1他3課)」)が参考になります

(a) 収益未計上の取引
法人が国外関連者に対して資産の販売、金銭の貸付、役務の提供その他の取引(以下「資産の販売等」という)を行い、かつ当該資産の販売等に係る収益の計上を行っていない場合において、当該資産の販売等が金銭その他の資産または経済的な利益の贈与又は無償の供与に該当するとき(事務運営指針2-19イ)。

(b) 低額譲渡
法人が国外関連者から資産の販売等に係る対価の支払いを受ける場合において、当該法人が当該国外関連者から支払いを受けるべき金額のうち当該国外関連者に実質的に資産の贈与又は経済的な利益の無償の供与をしたと認められる金額があるとき(事務運営指針2-19ロ)。

(c) 高価買入
法人が国外関連者に資産の販売等に係る対価の支払いを行う場合において、当該法人が当該国外関連者に支払う金額のうち当該国外関連者に金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与をしたと認められる金額があるとき(事務運営指針2-19ハ)。

取引価格が時価とかけ離れている場合、寄付金課税の問題が生じるわけですが、取引価格の時価は独立企業間価格と同じですので、寄付金課税と移転価格税制は同時に生じてしまうように思えます。

3.寄付金課税と二重課税
しかし、寄付金課税の場合、寄付金の支払い側の損金性が否認されるとともに、受け取り側にも受増益課税が課されますが、移転価格課税の場合、対応的調整によって二重課税は排除されます。

移転価格税制の場合、二国間の相互協議に持ち込むことができますが、寄付金課税の場合は相互協議にならず、二重課税が排除できない可能性が高くなります。そう考えますと国外関連者との取引については、一般に、移転価格税制の適用があった方が納税者にとっては有利です。しかし課税庁は税務調査において、小規模の事案については相互協議に乗らず一国内で対処できる寄付金課税を好みます。面倒でないからです。コストの問題もありますが、納税者としては、税務署の言いなりになって、即、寄付金課税を容認するのではなく、移転価格税制によって処理すべきかどうかを十分に検討した方が良いでしょう。

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