福岡高裁平成24年3月22日判決
(事件概要)
X:(原告・被控訴人)内航海運業者
Y:(被告・控訴人) 税務署長
内航運航業界では船舶の過剰対策として、船舶建造を行うためには一定の割合で既存船舶を解体することを義務付けた。その解体費用につき、交付金を支払う制度がある。Xは上記制度を利用して、船舶建造をするために取引を行い、消費税込みで費用を支払った。
Xは本件承諾書取引及び預託金証書取引において、課税仕入れに含めて計算したところ、Yは課税取引に該当せず、仕入税額控除は認められないとして更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分。Xは取り消しを求めて提訴。
1.論点
承諾書取引が資産の譲渡等に該当するか。
2.判旨 控訴棄却
本件要領等の趣旨から、使用承諾書の発行手続きを行えば、要件を満たす申請があればこれを認定する義務があったと解されるから、これは連合会の債権と解される。Xは、本件承諾書取引により権利を取得したというべき。
本件承諾書取引は、買い主であるXが新造船舶を建造するにあたって、留保者である売り主が、Xの認定手続きにおいて建造等交付金の免除を受けるために連合会の手続きに協力するという内容であり、留保者が行使する場合と同様に取得者も連合会に対して本件権利を行使できるものとするべきである。
3.解説
承諾書取引の対象が権利であり、資産の譲渡に該当すると判断。そして本件承諾書取引によって権利が消滅・減少するものではなく、同一性を保持しつつ移転したというべきであるとして国の主張を退けた。