名古屋地裁平成16年8月30日判決
(事件概要)
X:(原告)
Y:(被告)税務署長
A:Xの父
Aの相続が開始し、申告したところ、Yがその相続財産中一部の土地について評価額に誤りがあるとして更生及び過少申告加算税の賦課決定処分。Xが不服として取り消しを求めた。
1.論点
土地について通達と異なる評価額に基づく主張が認められるのはどのような場合か。
2.判旨 請求認容
土地1の時価(当審鑑定を採用(裁判所による鑑定))
納税者が反対証拠を提出して通達に基づく課税処分の適法性を争うことは妨げられない。その場合には通達の内容、当該証拠を比較考量してどちらがより法令の趣旨に沿ったものかを判断すべき。
被告鑑定は減価要因の無視や容積率の認定誤り等重大な影響を及ぼす問題点を内容しており、その合理性に強い疑いを抱かざるを得ないが、当審鑑定は、問題点は見当たらず、鑑定内容、経緯についても被告鑑定を上回る合理性を有する。
3.解説
課税庁が特段の事情がないにもかかわらず通達に基づくことなく、納税者に対して不利益な課税処分を行った場合、租税法の原理の一つである公平負担の原則反するものとして違法となる。
通達による評価額が時価を上回ると判断された場合は、課税処分は違法となる。
なお、路線価は公示価格の80%をめどにその価格が決定されている。
ある土地について複数の異なる評価額の不動産鑑定が存在する場合には、より合理性の高いと判断できる鑑定の評価額をもって時価と評価すべき。