国際課税における源泉徴収の意義

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東京高裁平成23年3月4日判決

(事件概要)
X:(原告・控訴人・上告人)建設業
Y:(被告・被控訴人・被上告人) 税務署長
A:非居住者

Xが非居住者Aから不動産を購入、但し源泉徴収を行わず。Yは所得税法212条1項及び同法213条1項2号による源泉徴収義務があったにもかかわらず、これを行わなかったとして納税告知処分及び不納付加算税賦課決定処分を行った。

1.論点
不動産取引において受給者の非居住者性の判定は支払者において過度の負担となるか。

2.判旨 Xの請求棄却
徴税の手続きにおいて、立法目的が正当であり、目的達成のための手段しての必要性と合理性に係る立法府の判断が著しく不合意であって、製作的技術的な裁量の範囲を逸脱するものでない限り、憲法13条、29条1項に違反しない。
本件源泉徴収制度は、非居住者が譲渡代金を無申告のまま出国する事例に対処するため必要であり、支払者に格別の負担を強いるものではない、その負担は憲法29条3項にいう公共のために私有財産を用いる場合には当たらない。
法令上に記載のない期待可能性、予見可能性と言った要件を儲けて源泉徴収制度を限定解釈する必要はない。
受給者は実際の徴収の有無、額いかんにかかわらず、確定申告で控除でき、源泉所得税と申告所得税との各租税債務には牽連性はない。国と法律関係のあるのは支払者のみで受給者との間には直接の法律関係はない。支払者の申告納税に係る租税債務の不存在や消滅と言った事情が何らこれに影響を与えないことは明らかで、申告納税に係る租税債務が存在しないにもかかわらず源泉徴収義務が存在することが憲法84条に違反するという主張は前提において間違っている。

3.解説
支払者に非居住者性判定の期待可能性や予見可能性がある場合に、支払者が受給者の非居住者性について判定義務を負うと限定解釈すべきとのXの主張に対して、このように解すると支払者の主観的事情で受給者の確定申告における納付すべき税額が左右されることになるとした。
本判決では。不動産の売り主が主としてアメリカに居住する者であり、取引の便宜上、住所登録を国内の売買目的不動産に移したことを原告が認識していたために、源泉徴収税の不納付を原告の責めに帰すべき正当な理由はないとした。今後、国際的電子取引の有無で受給者の非居住性判定を支払者に義務付けることが酷な場合も生じてくるであろう。

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